2025 年 84 巻 3 号 p. 107-109
症例は72歳女性.便秘薬服用後の腹痛の精査目的に紹介受診した.単純CTで腹腔内に遊離ガスと腹水を認め,消化管穿孔および汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.腹腔内には黄色の混濁腹水を認め,性状から上部消化管穿孔を疑ったが,腹腔鏡下では穿孔部位を特定できなかった.臍の小開腹創から小腸を引き出すと回腸末端から約30 cm口側に腸管の短軸方向に並ぶ2つの微小な穿孔を認め縫合閉鎖した.術後7病日の単純CTで直腸の周囲に空気を伴う高吸収を認め,形状からpress through package包装シート(以下,PTP)が疑われた.内視鏡を施行し直腸内のPTPを摘出した.PTPの誤飲による消化管穿孔は食道,十二指腸,小腸,大腸などで複数の報告があるが,本症例のように,PTPが小腸穿孔後に直腸まで到達し摘出に至った例は極めて稀である.