産業医学レビュー
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化学物質の肺病変の種差について肺腫瘍を中心に
森本 泰夫西田 千夏友永 泰介和泉 弘人
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2019 年 32 巻 2 号 p. 83-98

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抄録
化学物質のヒトへの有害性・リスク評価は、ヒトの疫学的調査の知見のみならず、動物ばく露試験、培養細胞試験などからの知見も重要で、これらを踏まえ総合的に判断される。動物ばく露試験のうち、齧歯類を用いた試験は、発がん試験などの試験方法が確立されていることもあり、多くの試験結果がヒト有害性・リスク評価の重要なデータとして使用されている。しかし、この齧歯類の反応のうち、ヒトでは反応が起きない、または起きにくいものも存在する。末梢気道におけるクラブ細胞が産生するCYP、特にCYP2F2はヒトでは発現がなく齧歯類、特にマウスでの発現が多く、化学物質を活性化の強い物質に変換し、肺病変をひきおこすことが報告されている。ナフタレン、スチレンなどの化学物質は、CYP2F2を介して代謝し、代謝産物が肺傷害や肺腫瘍を形成させる。故にナフタレン、スチレンによる肺病変形成は、マウス特有の反応である。ラットにおいて難溶性粒子を過剰にばく露した場合は、粒子のoverloadが作用して肺炎症、線維化、腫瘍化を引き起こすが、これはラット特有の反応である。ここでは、化学物質が引き起こす肺病変の種差、特にヒトと齧歯類での差異に関して紹介する。
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