大分工業高等専門学校紀要
Online ISSN : 1880-8921
Print ISSN : 1346-0781
ISSN-L : 1880-8921
河口干潟の環境変化がアサリ(Ruditapes philippinarum)の成育に及ぼす影響
成松 将吾高見 徹
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 43 巻 p. 33-40

詳細
抄録

    本報告書では,大分県番匠川の河口干潟を対象水域として,河口干潟の環境変化がアサリ(Ruditapesphilippinarum)の成育に及ぼす影響と,それに対する河川整備および環境管理のあり方について考察を行 った.既往の報告から得られた知見を整理した結果,アサリ漁獲量急減以後において,番匠川河口域では,①樋門・樋管からの栄養塩の流入によって富栄養化の傾向にあること,②富栄養化によると考えられるアオサ(Ulva spp.)の異常増殖が認められることから,アオサの異常増殖後の枯死と腐敗によって生ずると考えられる底質直上水の嫌気化と硫化水素(H2S)の発生がアサリの成育阻害を引き起こしていると考えられた.アオサからのH2Sの発生量とアサリの成育に及ぼす影響について室内実験を行った結果,アナアオサ(Ulva pertusa)の腐敗によって発生するH2Sがアサリの生存に影響を及ぼすことが明らかになった.このことは,番匠川河口干潟においてもアナアオサから発生したH2Sがアサリの死亡を引き起こし,アサリ漁獲量低下の原因となる可能性を示唆するものであると考えられる.したがって,番匠川河口干潟においてアサリ漁獲量を回復させるためには,アナアオサの異常増殖の原因となると考えられる河口域の樋門・樋管からの栄養塩の流入負荷量を低下させるような流域の水質管理や底質の嫌気化を防ぐような河川流量管理等の対策が必要であると考えられる.

著者関連情報
© 2006 独立行政法人 国立高等専門学校機構 大分工業高等専門学校
前の記事 次の記事
feedback
Top