副甲状腺癌の治療の基本は外科的切除である。初回手術においては,播種や遺残がないように根治的に切除を行うことが重要である。術式としてはen bloc切除が推奨される。術前や術中に癌と判断ができず腫瘍切除のみとなった場合,切除断端が陰性であれば追加切除は必要ない。リンパ節については,治療的郭清は行うべきであるが予防的郭清は必ずしも必要ではない。術後再発予防に有効な補助療法はない。再発巣に対しては,局所,リンパ節再発のみならず遠隔再発に対しても切除が行われる。侵襲を抑えながら十分な効果を得るためには副甲状腺ホルモン値,画像を用いて綿密な術前評価を行い,治療計画をたてることが重要である。
副甲状腺癌は原発性副甲状腺機能亢進症のうち1%以下を占める稀な疾患であり,エビデンスが少ないため標準治療が確立していない。しかし薬物治療や放射線治療は有効性に乏しいことから,外科的切除が基本であることに議論の余地はない[1~3]。初回手術においては根治性が重要で,再発巣に対しても副甲状腺ホルモンを減少させることを目的として腫瘍切除が行われる。
手術自体の治療効果を検討した研究はない。National Cancer Data Base(NCDB)を用いた1,057例の副甲状腺癌症例を対象とした後ろ向き研究では,死亡に関するハザード比は,非手術症例に対し不完全切除で0.05(95%信頼区間(CI):0.01-0.19),完全切除で0.04(95%CI:0.01-0.19),拡大切除で0.10(95%CI:0.02-0.45)と報告されている[4]。The Surveillance,Epidemiology,and End Results Program(SEER)データベースを用いた604例の副甲状腺癌症例を対象とした後ろ向き研究では,癌による死亡に関するハザード比は,非手術症例に対し腫瘤切除で0.29(95%CI:0.10-0.83),拡大手術で0.52(95%CI:0.11-2.41)と報告されている[5]。非手術群には切除不能例が含まれている可能性があり,手術の効果を正確には示していない可能性がある。
(2)手術術式播種を避けるために手術操作において腫瘍を損傷することなく根治的に切除することが重要である。腫瘍を損傷すると,癌死に関してはハザード比58.71(95%CI:2.39-1,439.96)と報告されている[6]。またR0手術とR1手術では,局所再発率0%と50%,相対リスクが18.0(95%CI:1.1-299.0)とも報告されている[7]。
副甲状腺腫瘍に対する術式としては,良性腫瘍に対する術式と同様に腫瘍のみを切除するparathyroidectomyと腫瘍周囲の組織を合併切除するen bloc切除に大別される。en bloc切除には,周囲の結合組織や脂肪組織を合併切除する,合わせて甲状腺を部分切除あるいは片葉切除する,さらに頸部リンパ節郭清を行うなどが含まれる。

副甲状腺癌の術式による予後に関する報告
Abbreviations NCDB:National Cancer Data Base,SEER:The Surveillance,Epidemiology,and End Results,IQR:四分位範囲,RR:相対危険度,HR:ハザード比,OR:オッズ比,CI:信頼区間
米国内分泌外科学会のガイドラインでは,副甲状腺癌に対する手術術式としてen bloc切除を推奨している[1]。腫瘍切除のみとen bloc切除を直接比較した研究では再発や死亡に関する相対リスクやオッズ比はen bloc切除で低いと報告されている[8,9]。その他の研究は両者を直接比較していないがen bloc手術[4,5,10~12]を行うことで死亡のリスクは必ずしも低くなっていない。術前あるいは術中に副甲状腺癌が疑われる際には,R0手術を目指して,en bloc切除を行うべきである。術中に副甲状腺癌を疑う所見としては,腫瘍が白色で硬いこと,浸潤に伴い周囲組織からの剝離が困難であることである。癌以外でも癒着などで剝離困難で,癌との鑑別が難しいことがあるがそのような場合は無理に剝離せず,合併切除を行う。一方で術前,術中に副甲状腺癌と診断されず,腫瘍切除のみが行われた場合は病理学的に切除断端が陰性であれば追加切除は不要である。O’Neillらの報告では腫瘍切除のみを行った副甲状腺癌症例6例に追加切除を施行したが癌の遺残は認めなかった[13]。Youngらは腫瘍切除,en bloc切除,腫瘍切除後追加切除の3群で5年生存率に差がなく,術式は全生存率に影響しなかったと報告している[11]。
臨床的にリンパ節転移がある場合に行う治療的リンパ節郭清は推奨される。リンパ節郭清を行うと,Talatらは再発に関して相対リスクは0.64(95%CI:0.45-0.90),死亡に関して相対リスクは0.70(95%CI:0.27-1.20)[8],Xueらは再発に関してオッズ比1.456(95%CI:0.317-6.687),死亡に関してオッズ比1.088(95%CI:0.214-5.538)と報告している[9]。リンパ節転移は3~30%にみられるとする報告もあるが[8],リンパ節郭清が行われていない症例が多く含まれているため,リンパ節転移の頻度はこれより低いと考える。腫瘍径が3cm以上ではリンパ節転移の頻度が7.5倍となるとの報告もあるが,リンパ節郭清が行われたのは405例中114例にのみで,リンパ節転移が癌死のリスク因子ではなかった[14]。臨床的にリンパ節転移がない場合に行う予防的リンパ節郭清に関しては,en bloc手術として系統的に中央区域のリンパ節郭清は行ったほうが良いという意見もある[15]。Enomotoらは施行した8例では2例に,施行しなかった3例中1例に再発を認めたが,疾患特異的生存率,全生存率に有意差はなかったと報告している[16]。副甲状腺癌のリンパ節転移やリンパ節再発の頻度は低いこと,リンパ節郭清による合併症などを考慮し,予防的リンパ節郭清は推奨しない。
術後の補助療法としては局所コントロールを目的として放射線外照射療法が行われる場合がある[17]。NCDBを用いた研究では885例の副甲状腺癌患者のうち126例の術後照射が行われていた群では,局所浸潤,リンパ節転移,R1以上の切除が有意に多かったが,照射無しの群と比較して全生存期間に有意差はなく,術後放射線外照射療法の効果は生命予後に寄与しないと結論付けている[17]。局所コントロールに対する効果がある可能性はあるが,放射線外照射療法による癒着は再発巣の切除の妨げとなることから,補助療法として放射線外照射療法を行うべきではない。
副甲状腺癌の再発は,局所,頸部リンパ節が最も多く,肺,骨への遠隔転移として生じる[18]。再発巣に関しては,局所や頸部リンパ節のみならず遠隔転移であっても可能なかぎり切除を行う。大きな病変が少数ある場合は切除による効果は得られやすい。小さい病変が多数広がる場合は,切除範囲が広くなる一方で効果は得られにくい。当院では小さな多発肺転移巣に対して小切開で肺を引き出し,結節を触知しながら核出したのち断端を手縫いで処理して健常肺組織の喪失を最小限にするように工夫している[19]。術前の画像診断で確認できていない病変が存在すると効果を得るのに必要量の病巣が切除できない。再発巣に対する画像検査はエコー,CT,MRI検査,MIBIシンチグラフィー[20,21]のほかFDG-PET[22]やメチオニンPET[23]などが有効である。副甲状腺ホルモンは副甲状腺癌の腫瘍マーカーとなるため,腫瘍量の目安となる。副甲状腺ホルモン値に対して画像で確認できている腫瘍量が少ない場合は,確認できていない病変がある可能性が高いので可能な限りさまざまなモダリティを用いて術前評価を行う。切除するべき病変が十分に確認できない場合は手術による効果は得られにくいため,他の治療を検討する。再発に対する手術が複数回に及ぶことは稀ではない。頸部再発に対する25回の手術と遠隔転移に対する3回の手術を検討した研究では,75%で術後カルシウム,62%で副甲状腺ホルモンが正常値まで低下し,86%で症状が改善したと報告されている[20]。Iacoboneらの再手術を行った副甲状腺癌6症例を対象とした研究では,全例に行われた1回目の再手術と4例に行われた2回目の再手術ではカルシウム,副甲状腺ホルモンともに有意に低下し,2例に行われた3回目の再手術ではカルシウム,副甲状腺ホルモンの有意な低下は認められなかったものの,症状改善は認められた[21]。回数を重ねるごとに手術の効果は得られにくくなるため,極力少ない手術回数で十分な効果が得られるような治療計画をたてることが重要である。
副甲状腺癌の手術において,初回手術は根治的であること,再発巣に対する手術は効果が期待できるだけの腫瘍量が切除できるか予測したうえで計画的に行うということが重要である。