2025 年 42 巻 1 号 p. 23-29
副腎皮質疾患の病態生理の解明は,内分泌分野における重要課題である。近年,シングルセルRNAシーケンシングおよび空間トランスクリプトーム解析の技術革新により,個々の細胞の特性把握や組織内での遺伝子発現の空間的分布を詳細に解析することが可能となった。本稿では,両解析技術の基盤について概説するとともに,大規模データから生物学的な意味を抽出するために必要な,データの前処理から高次解析に至る解析手法について解説する。さらに,両解析技術を用いて明らかになった,副腎皮質の加齢性変化や腫瘍形成過程における新知見を紹介する。シングルセルおよび空間トランスクリプトーム解析により,従来のバルク解析では見出すことができなかった細胞の挙動を捉えることが可能となり,副腎皮質疾患研究に新たな展開をもたらしている。