理論と方法
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特集 社会階層と評価システム
階層評価の多様化と階層意識
与謝野 有紀
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1996 年 11 巻 1 号 p. 21-36

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抄録

 本論文では、イメージ階層分布に関する数理モデル、すなわちFarono-Kosakaモデル(1991)の数理構造を解析し、モデル内における階層意識の変動メカニズムを明らかにした。Kosaka and Fararo(1991)、白倉、与謝野(1991)らによる既存研究は、FKモデルに対して、組み合わせ論を適用する、あるいは波の合成のモデルを適用することで、その分布の様態を捉えようとしてきた。ここでは、モデルを確率論的な視点から捉え直すことで、イメージ階層分布の問題を、たたみこみの問題として扱い、解明した。そして、このように問題を再定式化したとき、中心極限定理により、イメージ階層分布が階層評価次元sの増加とともに正規分布に近似していくことを示した。また、chance-societyのみでなく、より一般的に成立する以下の2つの定理を導出した。すなわち、定理1:「一般に、階層帰属意識は上に凸の対称の分布をする」、および定理2:「階層評価次元が増加すると、一般にイメージ階層分布は集中する」の2つである。特に、第2定理から、現実の中意識の変化に対する新たな解釈を示した。また、階層評価が多次元化することで、客観階層の差が上下に拡大したとしても、逆に意識の上では同質的になっていくというパラドキシカルな機構が一般に存在することを示した。

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© 1996 数理社会学会
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