抄録
社会的ジレンマあるいは公共財供給問題の従来の研究においては、変数として他者の協力者人数が利得関数に用いられているが、その人数を行為者がどう想定して戦略を決定しているのかについては論じられてこなかった。本稿では、他者について行為者が主観的に抱く協力の期待をモデルに組み込み、協力者が一定量獲得できれば供給される協力限定公共財の確立を目的とする集団(協力限定集団)について、ゲーム理論的分析を行った結果次の結論を得た。(1)他者協力期待の低い集団においては必要最低協力者人数(MCS)を少なく設定している集団が、また、高い集団においては多く設定している集団が公共財を供給できる。(2)大規模な集団においては公共財を供給しにくくなる。