理論と方法
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原著論文
行為者間に異質性が存在する社会的ジレンマ・モデル
神山 英紀
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1998 年 13 巻 2 号 p. 209-224

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抄録

 これまでに、「行為者の間に『異質性』が存在する社会的ジレンマ」を、モデル化することの重要性が認識されてきている。この論文では、まず、一般的に、そのモデルを、2選択肢N人ゲームとみなしたときの純粋戦略ナッシュ均衡の条件を明らかにする。次に、その具体的な例として、「放置自転車」に関する社会現象をモデル化し、その均衡を求める。この例においては、駅から住居までの距離が行為者間で異なることを考慮し、互いに異なる利得関数をもつプレイヤーによるN人ゲームとして、状況がモデル化されるのである。そこでは、(1)行為者の一部が協力を選択し、残りの行為者が非協力を選択するという状態が均衡となること、(2)最も「協力的」な行為者のもつ利得関数が、その均衡の存在にとって決定的なものとなること、(3)行為者の間の異質性を平均した、利得関数が同一であるモデルでは、その均衡は存在しないこと、(4)導かれた均衡は、それよりも協力者数が少ないどのような状態よりも、パレートの意味でより望ましいこと、が示される。

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© 1998 数理社会学会
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