理論と方法
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原著論文
シグナリング理論と順位制
─闘争回避に役立つシグナルの進化─
大浦 宏邦蔵 琢也
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1998 年 13 巻 2 号 p. 225-240

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抄録

 霊長類の社会に広く見られる順位制の成立メカニズムについて、「正直な」情報伝達という視点から検討した。
 順位制には、群れ内部における闘争レベルを引き下げる機能があるが、非対称持久戦の理論によれば、お互いの強さと資源の価値が正確にわかる場合は、闘争が引き合わない個体が資源をあきらめる戦略がESSになることによって、闘争が回避されることが知られている。この場合、闘争回避の問題は情報の問題に帰着する。本研究は、自らの強さと自らにとっての資源の価値を「正直に」相手に伝えるシグナルが進化する可能性を検討した。その結果、(1)シグナル発信の限界コストが正でそれが強い個体ほど小さくなる場合、強さを相手に伝えるシグナルが進化しうること、(2)「弱みを見せるハンディキャップ」を仮定した場合、資源の価値を伝えるシグナルが進化しうること、が明らかとなった。これらの結果は、順位制を非対称持久戦のESSとシグナリング理論の組み合わせで説明出来る可能性を示している。

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© 1998 数理社会学会
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