理論と方法
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原著論文
集合行為のジレンマにおける「連帯集団」の効果
「n人チキンゲーム」によるゲーム理論的分析
鈴木 鉄忠
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2006 年 21 巻 1 号 p. 49-61

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抄録

本稿の目的は、「共通利益と個別利害のジレンマ」の解決に「連帯集団」が及ぼす効果と社会的メカニズムを、マイクロ・レベルに基礎付けて解明することにある。利己的な行為者を仮定する社会理論では、ジレンマを解決する主要因として、「連帯集団」の存在がたびたび取り上げられてきた。しかしそれが行為者の意思決定状況や行動に及ぼす効果と社会的メカニズムについては十分な分析がなされていなかった。そこで本稿では、ジレンマが生じる問題状況を「n人チキンゲーム」によって定式化し、プレイヤー間の提携を考慮に入れた「強ナッシュ均衡」を用いて新たに分析した。分析の結果、「連帯集団」がコミュニケーション回路として機能することで行為者同士の共同行動が促されることによりジレンマが解決されるという、マイクロ-マクロ・レベルの社会的メカニズムが明らかになった。そしてこれは、「連帯集団」を通じた「集団まるごと加入」によって効率的な動員が可能になるという資源動員論の主張からも実証的に裏付けられることがわかった。

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© 2006 数理社会学会
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