日本における計量社会学的研究は、多重比較をおこなう研究課題にたいして、交互作用変数の投入をともなう同時分析ではなく、分割比較を多用してきた。しかし、標本を比較の単位ごとのサブ・サンプルにわけたうえで、同じ独立変数をもつモデルで別々に分析した結果を比較する分割比較では、比較された単位ごとの異同の判断が研究者の主観に左右されやすい。そこで、教育達成を題材にして、多重比較をロジットモデルによる同時分析でおこなう方法について例示的に検討した。とくに順序ロジットは、節約的な性質をもつので、多重比較の同時分析モデルとして使用しやすい。ロジットモデルにかぎらず、他の種類のモデルにおいても同時分析の可能性を探求する努力が必要だろう。