2006 年 21 巻 2 号 p. 313-332
この論文では,複数の職業的地位尺度をとりあげ,それぞれの尺度の性格と移動構造を記述する際に現れる固有の特徴について比較検討した。移動研究に用いられる職業的地位尺度は,大きくはデータ分析に先立ってスコアを与えるものと,データそのものからもっとも適合的なスコアを引き出してくるものとが区別されるが,本論文ではとくに後者のタイプの職業的地位尺度を取り上げ,その社会学的および統計学的な意味を考察している。実際に,職業中分類から作成された81×81の移動表に対応分析を適用し,そうした方法が今日の社会移動の状況を記述するのに有効であることを論じた。分析の結果,オーディネーション系の技法がもっともらしい職業的地位スコアを与えてくれること,パス解析にそのスコアを利用すると地位達成過程について従来とはまったく異なる理解がもたらされることが確認された。