理論と方法
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特集 若年非正規雇用・無業の計量社会学
仕事満足にみる若年非正規雇用の現代的諸相
―非正規・男性・未婚に着目して―
岡部 悟志
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2007 年 22 巻 2 号 p. 169-187

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抄録

 1990年代以降、若年層を中心に進行した就業の非正規雇用化は、彼らの社会的な地位達成のあり方に大きなゆらぎを与えた。そのような中、若者の間に広がる収入差などの格差に着目した研究は蓄積されつつあるが、一方で当事者である彼らの主観的評価に焦点を当てた研究は相対的少数に留まっている。本稿では、当事者評価の中でも特に「仕事に対する総合的な満足」(仕事満足)を手がかりとし、若年非正規雇用の実態把握から問題点の特定を行った。分析の結果、同じ非正規社員でも、未婚男性の仕事満足が最も低いこと、そして、当カテゴリに属する若者は、無職の若者と生活意識面で強い親和性があり、生家の暮らし向きや学歴などの経歴が恵まれていないことがわかった。さらに、当カテゴリに限定して仕事満足の決定要因を探ったところ、現在の社会的属性ではなく過去の教育体験、とりわけ親や親以外の大人との接触体験の多寡が影響していることが判明した。過酷な労働条件のもとで仕事満足が相対的低位にとどまる若年非正規雇用の問題に対して、その解決の糸口を専ら彼らの働き方や処遇改善だけに求めるのではなく、義務教育段階より大人交流体験を促進する教育プログラムを導入するなどの方策を、政策議論の俎上に載せていくことが急務といえる。

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© 2007 数理社会学会
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