理論と方法
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特集 社会学におけるパネルデータ分析の展開
世代内階層移動と階層帰属意識
パネルデータによる個人内変動と個人間変動の検討
三輪 哲山本 耕資
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2012 年 27 巻 1 号 p. 63-84

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抄録

 本稿は,パネルデータに基づき,階層帰属意識の分析をおこなうものである.第1の目的は,とりわけ世代内階層移動の効果に着目して,個人間効果と個人内効果とを峻別しながら階層的地位の影響を読み解くことである.第2の目的は,マルチレベルモデルを応用したパネルデータ分析(Hybrid Model)の事例を示すことである.4波分の「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」(JLPS)のデータを使用し,固定効果モデルとHybrid Modelによる実証分析がなされた.次いで,モンテカルロシミュレーションにより,両モデルの推定の性能の比較検討がなされた.実証分析の結果,世代内階層移動と階層帰属意識との関連が見出された.また,同じ測定による変数であっても,個人内の回帰係数と個人間の係数とでは,異なることがしばしばあった.さらにシミュレーション結果によって,固定効果モデルと比べて,Hybrid Modelはほぼ同等と言えることが明らかにされた.この結果は,Hybrid Modelの使用がパネルデータ分析における有用な選択肢となることを示唆するように思われる.

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© 2012 数理社会学会
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