2014 年 29 巻 1 号 p. 19-36
本論文は,成功人数が限られた投資状況を表現した小集団実験により,集団における成功者割合と利益率(コストとリターンの比)が,人々の投資行動と結果への満足度に与える影響を検証する.実験データは18人の被験者がネットワークを介して同時に参加・反復するPC上の投資ゲームから収集した.理論からの予想と実験データを比較したところ,投資行動の選択に関しては概ね理論通りだったが,昇進率と剥奪率の関係は,予想と完全には一致しないことが分かった.その結果,少額を投資した場合は,投資に失敗しても剥奪感を感じないという経験的事実を理論モデルに反映する必要が明らかになった.