抄録
本稿では,回答者に所得比較上での比較対象と,比較対象にイメージする平均所得額を直接尋ねた調査の結果から,(1) 個人属性によって,比較対象を選択する基準がどのように変わるのか,(2) 比較対象の違いによって,どれぐらい他者の平均所得額イメージが異なるのか,という2つの問題への回答を模索した.共変量を用いた潜在クラス分析の結果,(1) の問題に関して,性別・年齢の生来的な属性による比較対象選択の違いが確認でき,とくに「年齢」「性別」を基準とする選択に属性間での差異が確認できた.(2) の問題に関しては,比較対象を選択する個人の地位や,比較対象選択に関わる選択バイアスを考慮してもなお,選択された比較対象の違いによってイメージされる平均所得額に違いが確認できた.とくに「学歴」を重視して比較対象を選択した場合は,平均所得額を顕著に高く見積もることが明らかになった.