理論と方法
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29 巻, 1 号
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会長講演
  • 近藤 博之
    2014 年 29 巻 1 号 p. 1-15
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
     教育拡大にもかかわらず教育達成の階層差が持続的であるという事実は,何らかの特定要因や単一メカニズムに依拠した説明が無効であることを示唆している.この講演では,教育不平等に関する計量社会学的研究での,ハビトゥス概念を用いた因果的探求の可能性について論じている.まず,ブルデューの「構造的因果性」の概念に立ち返り,それが近年の社会学の文献にみられる「基本的原因」や「根本的因果性」の考えと同じであることを示した.その見方によるなら,ハビトゥスは社会的条件付によって諸実践に差異をつくりだすメタ・メカニズムとして解釈することができる.その観点から,多重的影響を包含した社会空間アプローチについて説明し,例としてPISA2009日本データの分析結果を提示した.さらに,意志決定において埋没費用が問題となるように,教育的選択においても個人の無意識や過去からの慣性が重要な役割を演じていることを論じた.
特集 準拠集団と相対的剥奪の数理・計量社会学
  • 石田 淳
    2014 年 29 巻 1 号 p. 17-18
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
  • 浜田 宏, 前田 豊
    2014 年 29 巻 1 号 p. 19-36
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
     本論文は,成功人数が限られた投資状況を表現した小集団実験により,集団における成功者割合と利益率(コストとリターンの比)が,人々の投資行動と結果への満足度に与える影響を検証する.実験データは18人の被験者がネットワークを介して同時に参加・反復するPC上の投資ゲームから収集した.理論からの予想と実験データを比較したところ,投資行動の選択に関しては概ね理論通りだったが,昇進率と剥奪率の関係は,予想と完全には一致しないことが分かった.その結果,少額を投資した場合は,投資に失敗しても剥奪感を感じないという経験的事実を理論モデルに反映する必要が明らかになった.
  • 前田 豊
    2014 年 29 巻 1 号 p. 37-57
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
     本稿では,回答者に所得比較上での比較対象と,比較対象にイメージする平均所得額を直接尋ねた調査の結果から,(1) 個人属性によって,比較対象を選択する基準がどのように変わるのか,(2) 比較対象の違いによって,どれぐらい他者の平均所得額イメージが異なるのか,という2つの問題への回答を模索した.共変量を用いた潜在クラス分析の結果,(1) の問題に関して,性別・年齢の生来的な属性による比較対象選択の違いが確認でき,とくに「年齢」「性別」を基準とする選択に属性間での差異が確認できた.(2) の問題に関しては,比較対象を選択する個人の地位や,比較対象選択に関わる選択バイアスを考慮してもなお,選択された比較対象の違いによってイメージされる平均所得額に違いが確認できた.とくに「学歴」を重視して比較対象を選択した場合は,平均所得額を顕著に高く見積もることが明らかになった.
  • Yang YANG, Kenji KOSAKA
    2014 年 29 巻 1 号 p. 59-80
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
         In this study, we attempt to elucidate the dynamic change of the levels of relative deprivation (RD) over time in a society where a number of immigrants enter a society or, conceptually equivalently, a number of newly emerging social groups are formed within a society. The objective of this study is to ascertain whether immigration increases or decreases the level of societal RD and how this mechanism occurs. We explore the problem by using the social network theory, which assumes either a random social network where actors are linked randomly with others in a given society or a biased social network where actors select some others preferentially as possible reference partners, whom we collectively term“reference group.”Estimating the change in the amount of societal RD over time and in accordance with various types of social networks formed by native residents and immigrants through simulation, we conclude that the higher the degree of “inbreeding bias,”the lower the degree of societal RD.
  • 石田 淳
    2014 年 29 巻 1 号 p. 81-97
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
     本研究では,Yitzhakiの相対的剥奪指数をもとに,分配的正義論における「機会平等の原則」に基づき,人々の剥奪を「剥奪を生じさせる要因が機会の不平等によるものかどうか」によって分けることで,相対的剥奪指数,そしてジニ係数を分解するという分析手法を提案する.具体的には,機会平等の原則に基づき,機会の平等を実現する政策について数理的なモデルを提案したRoemerのモデル,そしてRoemerのモデルに基づき,経験的データに基づき性別や親の地位などの「本人のコントロールが及ばない要因」によって生じた所得などの優位の差を仮想的に調整した社会の不平等度を測る「仮想的機会調整分析」,これらの先行研究をもとに,機会不平等に起因する相対的剥奪の分解法とその指数を定式化する.同時に,アメリカ・コミュニティ調査データと2005年SSM調査データを用いた分析例を示し,最後に分解法の特性と今後の課題をまとめる.
シンポジウム 数理社会学教育の課題と展望
原著論文
  • Ryoji MATSUOKA
    2014 年 29 巻 1 号 p. 147-165
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
         U.S. studies on parental involvement (PI) indicate that parenting practices vary by families' socioeconomic status (SES) (e.g., Lareau 2003) and that different degrees of PI differentiate students' academic achievement (e.g., Hill and Tyson 2009); PI differences based on parents' SES are considered one source of the achievement gap. While some scholars (e.g., Honda 2008) address this critical topic in Japanese society, existing studies using regional and/or retrospective data without a rigorous indicator of students' academic abilities fall short of investigating relationships between students' family SES, the degree of PI, and their achievement at one of the most important stages of education: compulsory education. This study is therefore intended to empirically investigate these relationships by analyzing nationally representative data of Japanese eighth-grade students. This study's results indicate that (1) higher SES parents tend to more frequently ask their children what they study in school; (2) the school-level PI indicator is not equally distributed socioeconomically, and School SES relates to the degree of PI in school activities; and (3) the degree of PI and school PI in school activities are associated with students' mathematics achievement. Contrary to expectations, however, PI mediates small parts of SES effects, especially at the student level; only some of the relationships between SES, PI, and achievement are verified empirically.
  • ―CPZ (2009) モデルによるネットワーク効果を中心に―
    藤山 英樹
    2014 年 29 巻 1 号 p. 167-189
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
     大学のゼミナールでは積極的かつ自発的な活動が求められている.そこでは,自分自身の学力の向上に加えて他の学生との協力も求められる.このような状況は,より自律性が求められる地域や職場での社会的活動に近いものとなっている.ここでの努力水準は個人の能力のほかにも,組織内の社会関係資本からも影響を受けると考えられる.本稿の目的は,Calvo-Armengol et al (2009) の推定モデルを用いて,ネットワーク効果を中心とした社会関係資本とゼミナール活動の努力水準との関係を実証的に明らかにすることである.結果として,ネットワーク中心性の努力水準に対する効果は正で有意でありGPAと同程度の大きさとなった.また,一般的信頼は負で有意となったが,規律性が正で有意であり,Uslaner (2008) による一般的信頼の解釈と整合的な結果が得られた.
  • 塩谷 芳也
    2014 年 29 巻 1 号 p. 191-206
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
     本研究の課題は,日本の若年男性におけるソーシャルスキルと雇用形態との関係を明らかにすることである.企業が求職者を正規雇用者として採用するか否かを判断するにあたって,ソーシャルスキルが評価基準として利用されている可能性を検討する.2013年2月に日本全国に居住する15-34歳の被雇用男性(n=872)を対象にインターネット調査を実施し,KiSS-18(菊池 1998)という尺度を用いてソーシャルスキルを測定した.雇用形態(正規, 非正規)との関係を分析したところ,ソーシャルスキルが高い男性ほど正規雇用である確率が高いことが分かった.年齢や学歴,特性的自己効力感を統制してもソーシャルスキルは雇用形態に有意な効果を及ぼしていた.さらに,学卒後の就労年数は雇用形態にかかわらずソーシャルスキルを高める効果を持たなかった.以上の結果は,ソーシャルスキルが雇用形態に影響している可能性を示唆している.現代日本の若年労働市場では,ソーシャルスキルによって人びとが選抜されていると考えられる.
数理社会学ワンステップアップ講座(8)
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