理論と方法
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研究ノート
展開形ゲームの新しい定義とその帰結
河野 敬雄
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 31 巻 1 号 p. 138-150

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抄録
 現在の標準的ゲーム理論においては,展開形ゲームと標準形ゲームとは目的に応じて使い分けているが,原理的には区別をしていない.つまり,表現の仕方が異なるだけである,という理解の仕方をしている.しかし,日常的ゲームを考えてみると容易に観察されるように,複数のプレイヤーの手番が交互に,あるいは順を追ってプレイされる囲碁・将棋,トランプゲームの類と,複数のプレイヤーの手番を同時にプレイしなければならないジャンケンゲームの類とは原理的に異なるゲームであると認識すべきである.一度この違いを受け入れると,逐次ゲームである展開形ゲームにおいては,先手番プレイヤーがもつ優先的選択権をすべてのプレイヤーが受け入れざるを得ない結果,採用すべきナッシュ均衡は原則としてプレイヤー全員の一致した選好の結果として一意に決まり,かつ複数のナッシュ均衡の中から敢えてパレート劣位なナッシュ均衡を選んでしまうことがあるという,従来のゲーム理論の〈非合理的〉な欠陥が解消される.
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© 2016 数理社会学会
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