分析社会学はヨーロッパを中心に普及しつつある有望な社会学研究プログラムであり,その成否の検討は,社会学的研究一般の将来にとっても重要な意味をもつ.本研究は,なかでもその理論構想の基礎にある因果メカニズムの解明という考えに焦点をあて,その因果概念をめぐって,統計的因果推論との関係において検討を進める.具体的には,分析社会学の提唱するメカニズムによる因果説明と統計的因果推論との関係について,分離モデルと連続モデルという2つの可能性を示し,後者の連続モデルを採用すべきだと論じる.その上で,行為水準における因果の解明を社会学の課題としつつ,マクロな現象のマイクロな行為への分解という分析社会学のプロジェクトは,行為の理解可能性ではなく,一般化可能で外的妥当性の高い因果推論の実施という観点から正当化されるべきだと主張する.