抄録
「ハムレット」を社会学的に読みといてみよう。社会学者が「ハムレット」の世界にかんするモノグラフを読んだなら、あるいはその世界を訪れたなら、それをどう分析するだろうか。「ハムレット」の世界を規範・役割・地位の体系を備えた制度とみなして分析することにより、その特質を明らかにするだろう。そうすると、ハムレットは弱々しい悩める貴公子でもなく、衝動的な性格の持ち主でもなく、まして分裂した人格の持ち主でもないことが明らかになる。それどころか、「ハムレット」は復讐劇ですらなく、デンマーク王国の危機と再生の物語であり、主人公ハムレットの役割はそのための殉教者であることが明らかになってくる。