理論と方法
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特集 政治への数理・計量的アプローチ
オルソン問題と資源動員論
―社会運動の合理的選択理論と政治社会学―
木村 邦博
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1994 年 9 巻 1 号 p. 39-54

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抄録

 「オルソン問題」と「資源動員論」との理論的な関係を明らかにすることによって、社会運動・集合行為の研究における合理的選択アプローチと政治社会学的アプローチとの結節点を探る。Mancur Olsonが『集合行為論』(1965)の中で扱った主題は、集合財供給に対する集団規模の効果、行為者間の異質性の効果、選択的誘因の効果、の3点に要約される。この3つの主題に対する資源動員論からの批判と合理的選択アプローチによるフォーマライゼーションの試みとをレビューする。集団規模の効果に関しては、合理的選択アプローチから導き出された理論的帰結を、資源動員論において取り上げられてきた社会運動の事例と照らし合わせることが課題である。また資源動員論では、選択的誘因の効果や行為者間の異質性の効果の考察にあたっては、複数集合財・複数集団の存在が想定され集団間での対立・協力関係が視野に収められている。このような視点を共有した数理モデルを用いて、資源動員論によるOlson批判の理論的検討を行うことも、重要な課題である。

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© 1994 数理社会学会
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