理論と方法
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特集 政治への数理・計量的アプローチ
複数議席の選挙における有権者の影響力
宮野 勝
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1994 年 9 巻 1 号 p. 55-69

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抄録
 複数議席の選挙システムにおける、有権者の選挙結果への影響可能性を考察する。複数議席の選挙においては1議席の選挙では生じないいくつかの新たな問題が生じる。とくに選好の対象が候補者個人から候補者の組に変わるため、予想の役割が深化し、新たな戦略的な配慮が必要になる点を考察した。また、実際に、議席数2・候補者数3という最単純ケースをとりあげ、最も単純な計算方式である多項分布モデルで影響力の計算を試みた。
 シミュレーションの結果、この仮定の下では、1議席2候補の選挙に比べ、2議席3候補の選挙の方が、有権者の影響力は大きいことがわかった。選挙結果に対する影響可能性を考慮する有権者が多ければ、1議席2候補の選挙よりも2議席3候補の選挙の方が投票率が高くなることになる。
 また、2議席3候補の選挙において、1人1票の場合と1人2票の場合を比較した。直観的には1人2票の方が影響が大きいと予想したが、両者で大きな差はなく、予想とは逆にわずかながら1人1票の方が影響力が高かった。
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© 1994 数理社会学会
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