2016 年 48 巻 5 号 p. 325-331
ATP感受性K+チャネル (KATPチャネル) は, 種々の電気的興奮細胞において代謝に同期するバイオセンサーとして細胞の生理機能を制御している. KATPチャネルは2種類の蛋白質Kir6.xおよびABCC (SURx) によって構成され, それぞれKCNJ遺伝子およびABCC遺伝子によってコードされる. これらのKATPチャネルを構成する遺伝子の変異は, 糖尿病, 高インスリン血症の発症から, 不整脈, 心血管系疾患に至るまで, 様々な疾患に関与する. 一方, Cantú症候群は, 先天性多毛症, 特異顔貌, 子宮内過成長, 心血管系および骨異常を特徴とする多臓器疾患である. 近年, ABCC9 (SUR2) あるいはKCNJ8 (Kir6.1) の機能獲得性変異がCantú症候群の原因であることが報告された. KCNJ11 (Kir6.2) あるいはABCC8 (SUR1) の機能獲得性変異により生じる新生児糖尿病に対しチャネル阻害剤により効果的な治療が行われており, 今後, Cantú症候群においても, KATPチャネルの機能獲得性遺伝子異常によるチャネル病としてとらえた研究が加速すると思われる. 本総説では, KATPチャネル病に新たに位置づけられたCantú症候群につき概説する.