いじめ被害は体験直後だけでなく,青年期にまで影響を与えており,その形成過程には精神的健康の回復や心理的変容も見られる。また,危機体験からの回復過程において,レジリエンスは精神的健康を促す一方で,心的外傷後成長などの心理的変容と精神的健康との関連には疑問がある。そこで,本研究では有機体価値理論を参考に意味づけに注目し,いじめ被害の青年期への影響として,心的外傷後成長とレジリエンスの検討を行い,精神的健康に与える影響の形成過程を明らかにする。本研究は,一般大学生男女420名(男245,女173,他2)を対象に質問紙調査を行った。構造方程式モデリングにおける分析から,資質的レジリエンス低群と高群で共に適当なモデルが確認された。その後,モデルの比較を行い,パスの等値制約モデルが採択された。結果から,いじめ被害の青年期への影響として,資質的レジリエンスにかかわらず,同化から獲得的レジリエンスを介して精神的健康を促す過程と,調整から心的外傷後成長を促す過程が示された。本研究から,いじめ被害者への支援に向けて,資質的レジリエンスの高低に考慮した上で,いじめ被害後の意味づけへの支援が有効であると考えられる。