2017 年 49 巻 3 号 p. 207-210
症例は6歳女児. 3週間続く嘔吐と活気低下, 1週間前からの複視があり, 両側外転障害と視神経乳頭浮腫を認めた. 頭部MRIで占拠性病変はなく腰椎穿刺を行い, 初圧1,000mmH2Oと著明な髄液圧の上昇があり, MRI所見と併せて特発性頭蓋内圧亢進症と診断した. 腰椎穿刺後速やかに自覚症状と乳頭浮腫は改善した. Acetazolamide (AZM) 内服を開始したが2週間後に再燃した. 腰椎穿刺で一旦症状は改善するものの, 同様の経過で短期間に3度再燃し反復腰椎穿刺を要した. 4度目の腰椎穿刺後からtopiramate (TPM) 内服に変更したところ, その後一度も再燃することなく良好な経過をたどった. 特発性頭蓋内圧亢進症が慢性に経過した場合, 視神経萎縮により視力障害を残すことが報告されており, 早期治療介入が肝要である. 内科的治療が無効の場合, 脳脊髄液シャント術など外科手術を要することもある. 内科的治療の第一選択薬はAZMであるが, 本症例では同治療薬は無効で複数回再燃し, 第二選択薬群の一つであるTPMが著効した. 両薬剤とも炭酸脱水酵素阻害作用により脈絡叢での髄液産生を抑制し特発性頭蓋内圧亢進症に有効であると考えられているが, TPMがより炭酸脱水酵素選択性が高く, 親油性が高いため血液脳関門を通過しやすく有効性が高かったと考えた. 経過が長引く症例では, 外科治療を行う前にTPM内服も考慮するべきである.