脳と発達
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短報
Rituximab投与を行った抗NMDA受容体脳炎の2歳女児例
中川 裕康横井 彩乃三谷 裕介黒田 文人谷内江 昭宏新井田 要宮 一志
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2017 年 49 巻 5 号 p. 344-346

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抄録

 抗N-methyl-D-aspartate受容体 (NMDAR) 脳炎は当初卵巣奇形腫に随伴する傍腫瘍性脳炎として報告されたが, 近年腫瘍合併のない小児の報告が増加している. 症例は2歳11カ月女児. 左半身優位の舞踏アテトーゼ, 口部ジスキネジー, けいれん, 興奮で発症し, 髄液および血清の抗NMDAR抗体陽性を確認し, 抗NMDAR脳炎と診断した. 画像検査では, 全身CTで卵巣を含めて腫瘍合併はなく, 頭部MRIも正常だった. ステロイドパルス療法とガンマグロブリン療法は無効だったが, 血漿交換療法により症状は改善した. しかし, 頻回のカテーテルトラブルにより血漿交換療法は中止せざるをえなかった. 中止時点で髄液と血清の抗NMDA受容体抗体陽性が持続していたため, rituximab追加投与を行い, 症状と抗体は消失した. Rituximab投与によりIgGの低下があり, ガンマグロブリン補充を要したが, 感染症などの合併症はなく安全に治療を終了した. 本症例を通じ, 成人例と比較した, 小児における抗NMDAR脳炎の特徴と治療管理上の問題点について検討する.

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© 2017 一般社団法人日本小児神経学会
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