脳と発達
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症例報告
Epstein-Barr virusを先行感染とする重症Guillain-Barré症候群の1例
横山 光紀松本 浩座波 清誉東原 拓也中川 慶一海田 賢一野々山 恵章
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2019 年 51 巻 4 号 p. 249-253

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抄録

 Guillain-Barré症候群 (GBS) において, 先行感染と病態との関連が知られているが, Epstein-Barr virus (EBV) を先行感染とする小児GBSの報告は少ない. 症例は意識障害, 背部痛で紹介された4歳女児. 傾眠, 多発脳神経障害 (Ⅲ, Ⅳ, Ⅵ, Ⅶ, Ⅸ, Ⅹ, Ⅻ), 四肢筋力低下, 背部・四肢の強い疼痛, 腱反射減弱などの多彩な神経症状を呈したが, 脳脊髄液検査で蛋白細胞解離を認め, また神経伝導検査で下肢優位の脱髄所見を認めたことから, 脱髄型GBSと診断した. 急性期血清中にIgG糖脂質抗体は検出されなかった. 下肢の疼痛出現 (第1病日) 後, 第3病日から経静脈的免疫グロブリン療法を行った. しかし第5病日に急性呼吸不全となり, 同日から4日間の非侵襲的陽圧換気療法による補助換気を要した. 神経症状はその後速やかに改善し, 第19病日に独歩可能となり, 第30病日に退院した. 第2病日の血清, 咽頭ぬぐい液, 便からEBVゲノム検出され, また第2病日のEBV抗EBNA抗体は陰性であり, EBVを先行感染とするGBSと考えられた. 本症例はFisher症候群やBickerstaff型脳幹脳炎と重複する症状を呈していたが, IgG抗GQ1b抗体は陰性であり, 臨床経過および電気生理学的所見からは脱髄型のGBSが主要な病態と考えた. EBVを先行感染とするGBSの病型や重症度は明らかでなく, 今後EBV関連GBSの病態を考える上で重要な症例である.

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© 2019 一般社団法人日本小児神経学会
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