脳と発達
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症例報告
てんかん発作が先行せずに発症したRasmussen脳炎の女児例
小松原 孝夫眞柄 慎一小林 悠放上 萌美皆川 雄介岡崎 実遠山 潤高橋 幸利
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2019 年 51 巻 4 号 p. 254-259

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抄録

 Rasmussen脳炎 (Rasmussen encephalitis; RE) は, 主に小児期に発症し, 慢性局在性脳炎をきたす自己免疫性疾患である. 通常, 一側性のてんかん発作を初発症状として発症し, 数年の経過を経て対側大脳半球の進行性萎縮と痙性片麻痺が徐々に顕在化する. 今回てんかん発作が先行せずに発症した非典型REの4歳6か月女児例を経験した. 痙性片麻痺で発症し, 一側大脳半球の進行性萎縮を認め, 診断基準3項目中2項目を満たしたためREと診断した. 補助診断として, 髄液中抗グルタミン酸受容体抗体が強陽性を示し, 髄液granzyme B濃度の有意な上昇を認めた. メチルプレドニゾロンパルス療法, 経静脈的γグロブリン療法が病態の改善に有効であった. 同様の症例はヨーロッパコンセンサス研究でRE with delayed seizures onsetとして紹介されている. 過去の報告と同様に, 本例の経過からは, REでは自己免疫反応が先行し, のちに慢性的な大脳障害を来すことが示唆された. REの特に病初期においては, てんかん発作を伴わない症例が存在することに注意が必要である.

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© 2019 一般社団法人日本小児神経学会
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