脳と発達
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原著論文
3歳未満で発症した限局性病変による側頭葉てんかんの臨床的特徴と外科治療
大吉 由希美齋藤 貴志岩崎 真樹住友 典子竹下 絵里本橋 裕子石山 昭彦大槻 泰介中川 栄二佐々木 征行
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2021 年 53 巻 1 号 p. 15-20

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抄録

 【目的】MRIで側頭葉内側に病変を認める乳幼児期発症てんかんの臨床的特徴と外科治療の発作予後を明らかにする. 【方法】内側側頭葉の病変による3歳未満発症のてんかんに対し2007年1月〜2018年7月に当院で焦点切除術を行い, 1年以上経過観察した18例を後方視的に検討した. 【結果】男 : 女=7 : 11で, 発症年齢, 手術時年齢, 術後追跡期間の中央値は16か月, 37か月, 55か月であった. 発症時の発作症状は動作停止が50%と最も多い一方で, チアノーゼ33%やてんかん性スパズム28%, 強直発作28%, 無呼吸11%と非典型的な症状も認めた. 術前発作間欠時脳波異常は50%で焦点性であったが, 39%は両側性, 11%は異常を認めなかった. 44%は初回画像検査で病変を指摘されなかった. 発作間欠期脳血流99mTc-ECD SPECTは75%で病変部の血流低下または増加, 18F-FDG-PETは全例で病変部や周囲の集積低下を認めた. 病因は腫瘍12例 (67%), 限局性皮質異形成3例 (17%), 海馬硬化2例 (11%) であった. 術後発作は78%で消失した. 術前脳波異常の局在と発作予後の違いに統計学的有意差はなかった. 【結論】乳幼児期発症側頭葉てんかんでは症状や脳波所見が局在性に乏しいことがあるが, 焦点切除術で良好な発作予後が期待できる. 外科治療の対象となる病変の検索に経時的な画像評価が有用である.

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© 2021 一般社団法人日本小児神経学会
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