脳と発達
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症例報告
神経学的後遺症を残した自己免疫介在性の急性前庭症候群の1例
落合 悟星野 英紀三牧 正和
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2021 年 53 巻 6 号 p. 462-465

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抄録

 急性前庭症候群 (acute vestibular syndrome ; AVS) は急激にめまい, 悪心, 嘔吐, 眼振, 姿勢の不安定性が生じる症候群であるが, 小児での報告例は稀である. 症例は9歳女児, 扁桃炎罹患後にめまい, 注視時の著明な複視, 嘔吐, 歩行困難で入院した. 体幹失調が明らかで, 深部腱反射の低下を伴う筋力低下も呈したため, 当初Fisher症候群を疑い無治療にて経過観察した. めまい, 悪心, 嘔吐, 眼振の症状は自然経過で緩徐に改善したが, 筋力低下と失調歩行が残存した. 髄液検査で単核球優位の細胞数増多と頭部造影MRI検査で小脳橋角部の両側第VIII脳神経に異常造影効果がみられ, 抗ガングリオシド抗体検査で抗GQ1b-IgG抗体陰性, 抗GM1-IgG抗体と抗GM2-IgG抗体が陽性であった. 以上より自己免疫介在性のAVSと診断した. 自己免疫介在性AVSでは, 複数の抗体の関与が報告されおり, 経過次第ではIVIGなどの急性期治療を考慮すべきと思われた.

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© 2021 一般社団法人日本小児神経学会
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