脳と発達
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原著論文
日本人Potocki-Lupski症候群7症例の臨床症状
柳下 友映山本 圭子西 恵理子チョン ピンフィー山田 博之永田 智岡本 伸彦山本 俊至
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2021 年 53 巻 6 号 p. 456-461

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抄録

 【目的】17p11.2領域の欠失はSmith-Magenis症候群 (SMS) の原因としてよく知られているが, 同領域の重複によって生じるPotocki-Lupski症候群 (PTLS) については本邦において十分な理解が得られていない. 日本人PTLS患者の実態を明らかにするため, これまでに経験した症例の臨床症状および経過をまとめ検討した. 【方法】網羅的ゲノムコピー数解析により17p11.2領域の重複を認めた症例の臨床情報をまとめ, 海外における既報告例と比較検討した. 【結果】7症例 (男/女=2/5, 年齢 : 1歳5か月〜5歳11か月) においてRAI1遺伝子を含む17p11.2領域の重複を認めた. 全例精神運動発達遅滞・非特異的な顔貌所見を示した. 筋緊張低下, および自閉スペクトラム症状を疑わせる常同行為などの症状はそれぞれ4例において認められ, てんかんは2例で認められた. 全7例で認められた表現型は, 過去にPTLSで報告されたものと矛盾はなかった. 【結論】SMSは先天性心疾患や特徴的顔貌などから比較的鑑別が容易であるが, 今回PTLSと確認できた7例の臨床症状は精神運動発達遅滞や顔貌所見, 筋緊張低下, 行動の特徴など, いずれも非特異的であるため, 臨床症状だけでPTLSを鑑別することは難しいと考えられた. PTLSの臨床的特徴をより理解するために, 患者情報をさらに詳しく調査する必要があると考える.

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© 2021 一般社団法人日本小児神経学会
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