脳と発達
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症例報告
Methotrexate関連白質脳症の急性期と回復期にSPECTで脳機能評価を行った1例
青山 周平松浦 隆樹板橋 寿和石田 隼一郎荒川 ゆうき菊池 健二郎康 勝好浜野 晋一郎
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2023 年 55 巻 1 号 p. 48-51

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抄録

 Methotrexate(MTX)関連白質脳症はMTX投与後に脳症症状と頭部MRIで白質病変を呈する.一般的に本疾患の症状やMRI異常所見は一過性であるが,これまでに詳細な脳機能評価が行われた報告は無い.今回,MTX関連白質脳症において,急性期と回復期にSPECTで脳機能評価を行った1例を報告する.症例は14歳でリンパ腫の治療を始めた男子.15歳時,MTX髄腔内投与5日後(第1病日)に,構音障害と両上肢不全麻痺を発症した.頭部MRIで左半卵円中心に高信号を認め,MTX関連白質脳症と診断した.2週間後に症状は消失したため,追加のMTX髄腔内投与を行ったが,第23病日に再び構音障害と左上肢不全麻痺,第55病日に意識障害,嚥下障害と両上下肢不全麻痺を認めた.第65病日のethyl cysteinate dimer(ECD)-SPECTでは両側大脳皮質にびまん性の血流低下を認めたが,同時期のiomazenil(IMZ)-SPECTではbenzodiazepine受容体の集積低下を認めなかった.その後,4週間で症状は消失し,ECD-SPECTでも脳血流は正常化した.IMZ-SPECTでは急性期と同様に集積低下を認めなかった.追加のMTX髄腔内投与は行わなかったが,19歳時で寛解を維持し,神経学的後遺症なく経過している.MTX関連白質脳症は神経細胞の一過性の機能低下を来すが,脱落を来さない病態であることが推測された.

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© 2023 一般社団法人日本小児神経学会
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