脳と発達
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<企画シンポジウム9:筋疾患の新たな治療導入による変化と課題>
福山型先天性筋ジストロフィーの最近の治療開発の動向
石垣 景子
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2023 年 55 巻 3 号 p. 196-200

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抄録

 福山型先天性筋ジストロフィー(Fukuyama congenital muscular dystrophy;FCMD)は,神経細胞移動障害による脳奇形と眼合併症を特徴とする重度の筋ジストロフィーで,日本人に特異的に多い.患者の8割は生涯歩行不能であり,呼吸不全,心筋症から20歳以前に死亡する難病であるが,治療法はない.創始者変異と言われるFKTNの3kbの挿入変異は,SINE-VNTR-Alu(SVA)型レトロトランスポゾンであり,FCMDはこのエクソントラッピング機能により生じるスプライシング異常症である.異常スプライシングを阻止するアンチセンス核酸を用いたエクソントラップ阻害療法が開発され,現在治験が始まっている.また,FKTNの遺伝子産物が,細胞膜構成成分のα-ジストログリカンの糖鎖合成の材料となるシチジン二リン酸リビトールからリビトール5リン酸を転移する糖転移酵素であることが解明され,プロドラッグ療法も期待される.Duchenne型筋ジストロフィーでは,ステロイド治療により歩行期間の延長など進行抑制効果が証明され,保険適用されている.東京女子医科大学にて,退行が確認されたFCMD患者に対し,プレドニゾロン投与を行う臨床試験を行った結果,投与6か月後の粗大運動能力尺度による運動機能評価にて改善を確認した.ここではFCMDの治療開発の現状に関して,解説を行う.

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© 2023 一般社団法人日本小児神経学会
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