2023 年 55 巻 5 号 p. 344-349
【目的】低酸素性脳症後にepileptic spasms(ES)を呈する症例に対するACTH療法の有用性・安全性を検討する.【方法】国立病院機構ネットワーク研究により,ESに対してACTH療法を行った342症例を登録し,その中で病因が低酸素性脳症と診断された症例を対象とした.ACTH療法の発作予後,有害事象について後方視的に検討した.発作予後は,ESが2か月以上抑制された場合を短期抑制効果あり,最終観察時(6か月以上)にESの再発を認めなかった場合を長期抑制効果ありとし,ACTH療法開始後の発作抑制期間も定量的に検討した.【結果】対象は49例で,ES単独例48例,ESに焦点発作が併存する症例が1例あった.ES単独例48例の短期ES抑制効果は71%,長期ES抑制効果は33%で,ES抑制期間(中央値,95%信頼区間)はそれぞれ9.0,20.6~53.1か月であった.ES抑制期間は,てんかん発病年齢,ES発症年齢,ACTH総投与量と正の相関があり,てんかん発病年齢が0~2か月の症例は,3か月以上発病症例と比較し短かった.また,valproateを併用した症例で長かった.有害事象としては,不機嫌(69%),感染症(38%),高血圧(34%)などがみられた.【結論】低酸素性脳症症例のESに対するACTH療法は有効で,発病年齢・総投与量・併用薬の影響を受けること,感染症に注意する.