脳と発達
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総説
小児神経と生命倫理学 生命倫理学と小児神経学のトランスレーション
笹月 桃子トカン ヴラッド酒井 康成吉良 龍太郎大賀 正一
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2024 年 56 巻 1 号 p. 5-8

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抄録

 近年,神経・筋疾患,小児がん,造血器疾患に対する新しい遺伝学的解析法と治療薬が次々に開発され,これらは難治疾患を抱える子どもと家族に大きな希望を与えた.一方,小児科医が判断すべき治療法とその選択過程は複雑・多様化した.小児科医が子どもの代弁者として決断すべき選択肢は,法的・倫理的妥当性が許容される範囲内で,今後さらに多様化すると予測される.患児の利益をどのように擁護し,何を守るべきかに関して,主治医は決断までの過程を短縮・効率化することはできない.生と死の臨界点に際し,家族・医療者が双方に納得する合意を形成するには,合意を求めずに議論を尽くす覚悟もまた必要である.小児科におけるトランスレーショナル研究とは,実践臨床から生命倫理の本質を見出す努力に他ならず,答えのない難問について悩み続ける科学ではなかろうか.

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© 2024 一般社団法人日本小児神経学会
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