脳と発達
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原著論文
ひらがな読み検査に基づく読字困難の過剰判定と検査基準値の検証
奥村 安寿子北村 柚葵櫻井 晴子白川 由佳大山 帆子稲垣 真澄浅野 倫子北 洋輔
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2024 年 56 巻 6 号 p. 420-426

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抄録

 【目的】ひらがな読み検査は,発達性読み書き障害の診断と治療に不可欠である.その一方で,現行の検査では低学年において読字困難の過剰判定をもたらす危険性がある.本研究では,小学校1,2年生における同検査の大規模データを収集し,実態解明,過剰判定の検証,ならびに新たな基準値の探索と現行基準との比較検討を目的とした.【方法】公立小学校の1年生511名,2年生422名にひらがな読み検査を実施し,音読時間を現行基準と比較した.次に,現行基準に基づく,各学年の異常判定率を検証した.さらに,3年生までの縦断追跡データから新基準値を作成し,1,2年生の異常判定率を検証するとともに,縦断追跡経過を現行基準と比較した.【結果】1,2年生の音読時間は現行基準よりも大幅に長く,現行基準に基づく異常判定率は1年生で47.0%,2年生で30.3%に達した.新基準は,現行基準よりも大幅に寛容な値となり,異常判定率は両学年で7%前後となった.縦断追跡経過の比較では,現行基準下で対象児の半数近くが読字困難に分類されたのに対し,新基準下では約15%に低下し,過剰判定の改善が示された.【結論】ひらがな読み検査の現行基準は,1,2年生の実態よりも厳格であり,読字困難を過剰判定する危険性が極めて高いことが示された.新基準は,医学診断および教育的介入の両面でより適切と考えられ,今後は学年基準値の修正を進めていく必要がある.

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© 2024 一般社団法人日本小児神経学会
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