2025 年 57 巻 4 号 p. 290-295
現在医療型障害児入所施設において利用者の高齢化・重症化が進み,どこまで侵襲的な治療介入を行うかが大きな倫理的課題となっている.近畿地区の重症心身障害児施設31施設に看取りの実態に関する調査を行い,18施設から回答を得た.18施設中15施設で看取りの経験があり,その総数は69例であった.その決定は,家族と医療・ケアチームとの協働意思決定が最も多かった.死期が迫った時,特別配慮するケア内容は,侵襲的治療介入の制限が最も多かった.その他緩和ケア,個室用意,家族のケア参加などが挙げられた.また死後正面玄関から見送る施設も6施設あった.
当センターでは,現在の病態,家族の希望,ケアの目標,具体的なケア内容をアドバンス・ケア・プランニング(advance care planning;ACP)として文書で共有し,家族から法定代理人として署名をいただく.その上倫理委員会にACPを図り承認されれば,本人の最善の利益に沿う形を多職種協働で支援する.具体的なACPを作成した10例の内,作成後7例が召天した.他の医療機関ともACPを共有した例が3件,医療・ケアチームで決定した例が2件あった.家族が希望しない侵襲的治療介入は,蘇生,高カロリー輸液などであった.その支援の内容は,日中活動・イベント参加が最も多かった.
療育の役割は,医療・ケアチームで本人の人権と尊厳を大切にし,最善の利益を個別に支援することにある.ACPの作成は,意思表示ができない本人の最善のトータルケアを法定代理人である家族と共に考える良い機会となる.