脳と発達
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周期性嘔吐症脳波における閉眼反応の自己回帰解析
小川 昭之
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1978 年 10 巻 3 号 p. 225-236

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抄録

周期性嘔吐症脳波の特徴的な所見のひとつに発症極期にみられる高振幅徐脈が開眼で抑制される現象 (閉眼反応: 福山) がある.この閉眼反応の特性をより詳細に知ることを目的として, 1次性アセトン血性嘔吐症7例 (男4例, 女3例, 平均5才8ヵ月) の発症期と間歇期とにおける閉眼覚醒時と, それにつづく70秒間の単極導出脳波に自己回帰解析と要素波解析を施し, 高次変換活動性を基本的な非周期的活動の1次と, 周期的活動の2次の活動性に分け, 脳波活動に含まれるα, β, θ, δ波活動の周波数, パワー, 減衰振動の持続性や情報活動量などの諸特性が開眼にともなって如何に変化するかを追求し, 次の結果をえた.
1) 6才女児例について発症期, 間歇期脳波における要素波特性の開眼にともなう変動を例示した.
2) 開眼にともなう平均周波数の変化は発症期と間歇期においてほとんど差はみられなかったが, 発症期では前頭部のβ 波と中心部のθ波が開眼にともなって間歇期よりも1Hz程低い周波数へ移行する傾向がみとめられた.
3) 間歓期に比して発症期では開眼にともなってα 波の平均パワー百分率が低下するのに対して, δ, θ 波のそれは有意 (p<0.05) に上昇することがみとめられた.
4) 減衰振動の持続性をみると, 開眼にともなって, 間歇期では前頭部のα, θ波がより短い持続性を示してくるのに対して, 発症期ではβ 波により長い, δ 波により短い持続性がみとめられた。
5) 開眼にともなう平均情報活動量の変化をみると, 間歇期ではα, θ波に, 発症期ではδ 波にそれぞれ低下がみられた.
6) 以上の結果をFreeman (1975) の「ニューロン集合系」理論にもとついて考察すると, 周期性嘔吐症発症期では系内のニューロン問に相互作用がない (KO集合系) か, 1種の相互作用だけがある系 (KI集合系) の興奮性が高まり, 開眼によってそれが抑制されるが, 問歇期では二つのKI部分集合系 (つまり, 四つのKO集合系) からなる系 (KII集合系) の興奮性が開眼によって抑制されるものと考えられた.

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© 日本小児小児神経学会
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