脳と発達
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小児脳底動脈閉塞症
自験例ならびに文献報告例の分析と成人例との対比
三輪 聡一村田 高穂奥村 厚森 惟明半田 肇
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1978 年 10 巻 5 号 p. 350-358

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抄録

小児の脳底動脈閉塞症例を報告し, 小児文献報告例の分析と成人例との対比を行なった. 症例は13才男子で, 発症4日前より軽度の発熱, 頭痛, めまいがあり, 右片麻痺, 構語障害, 軽度の意識障害で突然に発症した. 脳血管撮影にて前下小脳動脈と上小脳動脈間の脳底動脈の閉塞, CTスキャンにて橋左腹側部に低吸収域を認めた. 動脈硬化症, 心臓からの塞栓症などによる閉塞症とは考えられず原因は不明であった. 血流改善剤を主とする保存的療法にて症状は軽快, 退院した. 16才以下の小児における本症は極めて稀で本例を含め18例にすぎない. 成人例と比較すると, 1) 成人例同様男子に多い, 2) 成人例では脳動脈硬化症が主要病因であるのに対し, 小児例では特発性および先天性のものが多い, 3) 臨床症状は意識障害, 片麻痺または四肢麻痺, 瞳孔異常が主徴候で, 成人との間に差異は認められない, 4) 成人例では脳底動脈近位部の閉塞が多いが, 小児例では中部に多い, 5) 確定診断にはCTスキャンと椎骨動脈撮影が必要である. 予後は, 成人例では極めて不良であるが, 小児例では比較的良い.

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© 日本小児小児神経学会
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