1978 年 10 巻 5 号 p. 389-396
癩癇大発作後, 喚語困難が著明な健忘失語を呈した11才男子症例. 失読, 失書, 失算, 左右失認, 手指失認, 構成失行等の優位半球頭頂後頭葉障害に起因するとされるGerstmann症候群を合併していた.
言語理解, 言語表出とも障害され, 文字言語では読み書きとも仮名より漢字の障害が強く, 回復も仮名の方が早かった. 読字より書字が先に回復し, 言葉より計算が先に回復した. 日常会話はほぼ2ヵ月で殆んど不自由がなくなったが, 1年後にもなお国語, 英語は不得手である. 小児癩癇はきわめて多い疾患であるが, 発作後の失語症は記載されているわりには頻度が低く, 日常臨床で遭遇することは比較的稀である. その原因は不明であるが, 大脳機能障害として病態を把握し, 病変部位, 性質の診断を行なうことが治療上重要である.