抄録
Moyamoya病 (鈴木1969) は, 脳血管写上脳底部にモヤモヤとした異常網状血管像 (moyamoya血管) を呈する疾患である. 日本人に多発し, 原因は不明であるがまず内頸動脈終末部付近に狭窄性変化が生じ, その緩徐な進行に伴って脳底部にmoyamoya血管が出現し, このmoyamoya血管の本態は脳底部穿通動脈を母体とした側副血行路であると考えられている. 我々はこれまで本疾患100例を経験し種々の検討を加えてきたが, 本稿ではその結果について述べた. 本症は小児成人ともにみられるが女児に発生頻度が高く, 発症症状の主たるものは小児では脳乏血症状, 成人では頭蓋内出血症状であった. 追跡頸動脈写所見は小児ではダイナミックに変化しそれを6期相に分類し得たが, 成人では経時的変化は認められなかった. 脳底部以外の頭蓋外から頭蓋内への側副血行路であるethmoidalおよびvault moyamoyaにおいても小児成人間には種々の点で相違が認められ, そのよってきたる理由についても述べた. その他小児における特徴的脳波所見, CT所見, 剖検所見, 我々の行っている外科的治療等について述べ, 最後に本症の内頸動脈終末部における初期変化類似の所見を得た動物実験の結果から本症の原因に関する我々の考え方を述べた.