1982 年 14 巻 6 号 p. 591-596
生後3ヵ月より発症し著明なるいそう, 回転性眼振, 成長ホルモン (GH) の高値を呈し, 放射線治療により著しい症状の改善をみた乳児間脳症候群の1例を報告した.症例は1歳3ヵ月の男児でるいそう, 回転性眼振を主訴として来院した.生後3ヵ月より体重増加が停止し, 入院時体重5, 9409 (-4S.D.) とるいそう著明で顔色も蒼白であったが, 多動で機嫌も良好であった.CT scanにより視床下部から両側前頭葉底部に及ぶ巨大な低吸収値域を認め, また内分泌学的検査によりGHの持続的な高値を認めた.以上より乳児間脳症候群と診断し, 放射線治療を行い臨床症状と検査所見の改善をみたが, 放射線によると思われる脳血管障害をおこした.
本症候群でのるいそうの原因は不明であり, 多くの議論がなされており内分泌異常特にGHの異常が大きな要素とされているが, 一部には多動によるエネルギーの過剰な消費も関与していると考えられた.