抄録
9歳頃より性格変化・行動異常にて発症し, 知的退行・運動退行・錐体路徴候・痙攣・前頭葉症状を呈した20歳男子例を報告した. 本症例ば血漿極長鎖脂肪酸が著明に上昇していたことよりadrenoleukodystrophy (以下ALDと略) と診断した. 従来の小児期発症ALDと比較して本症例の際だった特徴は, 1) 精神症状で発症, 2) 病初期のX線CTでの前頭葉優位の病変, 3) 原始反射などの前頭葉症状の存在, 4) 発症より11年経過し, なおかつ緩徐な経過をとっていることなどである. 前頭葉優位の所見を呈したALDはまれであり, 文献的に考察した.