Mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis and strokelike episodes (MELAS) の男児2例を対象として, PETにより脳循環代謝量を定量的に測定し検討を加えた. PET測定はHEADTOME-IIIを用いて, 脳血流量 (CBF), 脳酸素消費量 (CMRO2), 脳酸素摂取率 (OEF), 脳ブドウ糖消費量 (CMRGlu) を測定した. 2症例とも全汎的なcMRO2の低下が認められたのに対し, CBFは大脳皮質を中心にむしろ高値を示していた. その結果, 脳全域に亘って相対的なluxury perfusionを呈すると考えられた. 一方, CMRGluはほぼ正常範囲にあったことから, 本症では中枢神経系におけるミトコンドリアの機能低下に伴う酸素代謝の障害が病態の中核をなすと推察された. 更に, 嫌気的解糖で作られる過剰の乳酸のために, 脳の乳酸アシドーシスが惹起され, 脳血管の拡張が起こることがCBFの増加として捉えられたものと考えられた.