抄録
高ナトリウム血症を呈した水頭無脳症を2例経験し, 内分泌学的検討を加えたので報告した. 2症例とも生後約1週間は血清ナトリウムは正常であったが, それ以降は150~160mEq/Lを示した. 高血漿浸透圧であるにもかかわらず, 哺泣など渇きを訴える行動は見られなかった. 水分制限試験では血漿浸透圧が上昇しても尿浸透圧は低値で, 抗利尿ホルモン (ADH) の分泌は見られなかったが, ADH負荷試験では, 尿浸透圧の上昇が認められた. したがって, 渇機構とADH分泌の両方が障害された潜在性尿崩症と考えられた. ADH分泌細胞, 渇中枢, 浸透圧受容器は, すべて視床下部に存在するが, 2症例とも視床下部の形成異常があったため潜在性尿崩症を呈したと思われた.