1994 年 26 巻 5 号 p. 398-403
経過中に聴性脳幹反応 (ABR) のH波以降の成分の欠落, または顕著な弁別不良が認められた小児7例について検討した.7例中2例は, 脳幹を含め中枢神経系を広範に障害する変性疾患を有していた.しかし, 他の症例では臨床症状の主体は3例が振戦, 2例が錐体路症状であり5例とも脳幹の異常を示す症状は認められず, 画像診断上も明らかな脳幹の病変は認められなかった.7例中5例ではABRの経時的な変化は臨床症状とよく相関していた.1波以降の成分の欠落, または顕著な弁別不良をきたす病因は多彩であり, 必ずしも従来の報告ほど重篤な脳障害を反映しているとは限らなかった.また, ABRは経時的に繰り返し施行し, 他の検査と合わせて評価する必要があると思われた.