2000 年 32 巻 5 号 p. 442-444
脳死と臓器移植は本来全く別の概念である.不幸にして脳死に至った患者さんに呼吸・循環の維持を継続することが「患者さんのためにならない」と考えられる時, もし臓器提供を希望しておられるならその意志を生かしたい, ということで移植医療につながるのである.医療者がまず最初に行うべきは, 脳死の診断を行い, 集中治療を継続することが患者さんやご家族の利益になるのか否かを自らに問うことであろう.呼吸・循環管理が大きく進歩した現在, 臓器移植ばかりを先走らせずに, 集中治療の現場において日常頻繁に遭遇する「どこまで治療を行うべきか?治療により患者さんの得られるものは何で, 失うものは何か?」という問題を討議するべきである.