2002 年 34 巻 5 号 p. 431-435
膀胱出血をきたし出血性shockにより死亡したと考えられたMenkes病の2歳男児例を報告した.1歳3カ月時に膀胱憩室を認めた.以後, 2歳時に反復する尿路感染症を認め, 2歳9カ月時に突然膀胱から持続的に出血が出現し死亡した.剖検にて膀胱には, 腹膜下に達した巨大な血腫と壁が薄くなった膀胱憩室が認められ, 組織学的には膀胱壁の血管の破綻によると思われる粘膜直下の出血がみられ一部筋層に入り込んでいた.膀胱の動脈の内膜は一部肥厚を認めた.本症例は膀胱憩室, 脆弱化した膀胱壁および本症特有の血管異常により, 膀胱出血をきたし致命的経過をとったと考えられた.Menkes病では, 神経症状とともに泌尿器系の合併症に対しても注意深い観察が必要であり, その対応も検討すべき点であると思われた.