脳と発達
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小児神経科専門医におけるキャリーオーバー診療
桃井 真里子森 雅人
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2005 年 37 巻 3 号 p. 208-213

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抄録

小児神経科専門医のキャリーオーバー診療の実状を把握し, 問題点, 整備すべき環境などを明らかにし, あるべき診療体制を考察する目的で, 日本小児神経学会評議員を対象に調査票による調査を行った.回答率は71.7%(205名中147名) であった.そのうち57%が16歳以上の患者の診察を継続していた.積極的に成人科へ転科をすすめる条件としては他の専門治療が必要になった場合, 入院など小児科の範囲での診療が困難になった場合にみられた.小児神経科専門医としてキャリーオーバー診療をどう考えるかという問いには, 39%が小児期発症であり, 小児神経科専門医が診るべきであると考えていた.そのためには小児神経科専門医研修としてキャリーオーバー診療を研修に組み込むべきという意見もみられた.一方, 小児神経科専門医のカバーする領域が広がり負担も増えるため, 成人科, 専門科との連携を行う必要があるとの意見もあった.小児専門医の継続診療がよいのか, 成人専門医の診療がよいのかは, 疾患によっても異なるが, より効率的な成人診療の体制の構築は不可欠である.また, 診療上は診療報酬体系が成人になると変わることが問題点としてあげられ, 公費負担の継続や, 入院での管理料など疾患や病態に応じた診療報酬の必要性や看護体制などの医療体制の問題が検討課題と考えられた.
キャリーオーバー診療は今後も医療の発展により増えていくと考えられ, 連携医療の体制を具体化する時期であると思われた.

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© 日本小児小児神経学会
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