抄録
低酸素性虚血性脳症 (HIE) 後遺症を有する男児の呼吸様式を観察した. 呼気から吸気に移行した後に中間吸気位で呼吸運動が停止し, 中間吸気相または吸気終末時にさらに吸気が重畳する呼吸様式が主体だった. この重畳する2段階目の吸気が明瞭でない持続性吸気のパターンも時にみられ, また, 強直性けいれんの後に吸気の重畳する位相の変化も観察された. 吸気のbuildupや吸気から呼気への移行といった呼吸サイクル形成の部分的な異常が, 脳幹病変を有するHIEにおける中枢性呼吸障害の1型であると考えられる. 人工呼吸器の使用や薬剤治療の検討には, 個々の症例でけいれんの呼吸への影響を含めた詳細な観察が必要である.